１3．私・娘・夫　三角形のネガティブエネルギー

私は特急あずさに乗っていた。

この講座の全日程を私は　特急列車に乗り日帰りで通っていた。

片道2時間半　。

私が私の心と対話するには　とても良い距離に感じていた。

 

今朝の家での会話を思い出していた。

 

「おかあさんまた行ってしまうの？」

娘が　悲しそうに私に訴えた。

「私は　いやだなぁ　だっておとうさんはすぐにおこるんだもの」

「そんなこと言わないで。だって学校は送ってもらわないとだめでしょう。」

私達家族は　八ヶ岳麓の森の中に住んでいた。

娘の通う学校までは　５キロもあるが　バスも電車も使えないので　車の送り迎えが必要なのである。

 

「ねえ　あまり気にしないで　がんばってみて。」

「えーーーー」

「おかあさんは　今このことを勉強したいと思っているし　今しか　この講義は受けられないし。」

私の受けたい講座は　年に一回しか行われていない。だから　この機会を逃すと　また1年先になってしまう。

娘は　いつも　私が出かける時に　父とうまく今日できるだろうかと心配していた。

 

「じゃあ　いってらっしゃい」

夫が駅についたときに私は夫に言った。

「あ・　娘に　今日　傘をもっていったほうがいいよっていっておいて。」

「えーーーそんなこと　自分でわかるだろう。送っていくことだけで精一杯なのに」

まただ　また　いやがっている。

兄に対しては　こんなではないのに　なぜ妹には　こうなのだろう。　

私は　またがっかりしてしまった。

 

 

夫は常に　娘に対して　暴言を吐き　娘は　深く傷ついていた。

 

癌だったときに　私が入院すると告げたときに娘は　ドカーンと落ち込んでしまった。

私がいつも　夫との間に入り娘のことを守ってきていたから。

彼から守らなければいけない。と感じつづけていたから。

彼を正さなければいけないと感じていたから。

娘は　私の1回目の入院の初日から　学校へ行けなくなってしまった。

　自分では　学校に行こうと努力するが　甲状線がはれて　頭痛と吐き気、下痢の症状がつづき　体が自分のものでなくなってしまったかのようだった。

私がいないということが　大変なストレスとなり　体に支障をきたしていた。

　それは　私が　1回目の入院をして　退院する日までつづいた。

私は　夫に　その間　手紙を書いたり話したりしつづけた。

「どうか　娘にあたらないで　私のいない間は仲良くしていて。あなたは　父親なのだから。うそでもいいから　そうふるまってくれないかしら」と。

「そうでないと私は　ゆっくりと入院ができないから　おねがい　がんばってみて。」と。

 

私は　ゆっくりと　入院ができていなかった。

たびたび電話で娘の具合が悪いと呼び出された。

　私は　病院に外出許可をもらって　家に帰り　娘を病院へ連れていった。

たくさんの薬をもらい　そして自宅へ送り　また病室へ戻った。

翌日　その薬がきかないと　連絡が入り　私は外出届を提出して家に帰り　　また別の病院へ娘を連れて行った。

事実　娘は　どんな薬を飲んでもよくはならなかった。

もう　お手上げだった。　

私は「　こんなことでは　安心して　手術を受けることができない。」と夫に怒っていた。

私は　手術を受ければ　最低でも　丸２週間は　病室からは出られない。

夫は　あいかわらず　娘の意思の弱さをあげ　娘のことを責めつづけていた。

娘には　親の愛が必要だった。

そのことをいくら夫に話しても　わかってはもらえなかった。

 

 

 

夫は　彼女の誕生をとても喜んでいた。

一人目が男の子だったので　

「二人目は　女の子がいいなぁ」

と日ごろからつぶやいていた。

夫の思い通りかわいい女の子が生まれた。

とても　かわいがった　毎日毎日。

ある日　2歳の長男の目が私は気になった。　

長男は　夫が　娘をかわいがっている風景をみて悲しそうな顔をしていた。

いままでは　ぼく一人だったのに　ぼくをおいてきぼりにしないでという目だった。

「おとうさん　もう一人子どもがいるのよ。ほら今　悲しそうな目でみていたよ・同じように　かわいがってあげてね。」

私が何気なく言った言葉に　夫は　ショックを受けてしまった。

夫自身の　幼児期の体験が思いだされてしまったようだった。

彼は　両親を幼児期に亡くなっている。

そして　兄弟がいないので　ひとりぼっちだった。

自分の子ども二人には　自分の幼児期の悲しい体験は　絶対にさせない。

この子達は　幸せに成長していくんだと決めていた。

 

娘をあやしている　父親を眺めている長男の悲しみを知ったときから　夫は変わってしまった。

娘を後回しにして　長男を溺愛した。

私は　二人の子を同じように愛してあげてといったのに

なぜか　長男に悲しみを感じさせないぞという決意をしてしまったようだった。

私が

「二人とも同じようにしてね」

と言っても

「女の子はわからない。男の子の気持ちしかわからないよ」

といつも言いつづけていた。

 

そして　それを感じとっていた娘も　父を敬遠して　私に守られながら　成長していった。

 

今回の私の初めての入院は　娘にとって　生まれて初めて　母親から切り離される体験だった。

そして　恐怖？の父親との暮らし。　３人いるはずなのに　なぜか長男は　そんなこと　関係ないと　いつも傍観者になっていた。

だから　自分を守ってくれる母親のいない家庭で　父と娘の心の中は　修羅場であった。

 

私は　外泊許可で帰るたびに毎日のいざこざの話を聞かされると

夫には　「いいかげんにして。」　娘には「がんばってよ」と言いつづけた。

 

彼女の病はどんどん悪くなっていった。

私は　外泊や外出許可をもらいながら

手術を予定していた日の週に入っていた。

具合のわるい娘を連れて　何軒めかの病院で診断された。原因不明の症状にようやく病名がついた。

「彼女は　不治の病です。難病です。一生死ぬまで　薬を飲んでいかないとならない病気です。」

私は　彼女まで　病気にしてしまった。

「今　彼女に必要なのは　おかあさんがそばにいてあげること。そして　一生飲んでいく薬の種類を決めるために　いろいろな薬を試すのでここ２週間くらいが一番大切です。」

と医師は言った。

 

私が癌だというのに、もう　何もかもがわからない　と強く気持ちが落ちこんだ。

 

手術を担当してくれる予定の医師に　娘の件で私は相談した。

手術後の2週間は　動けないから　私が入院している病棟に一緒に入院させる方法があると言っていた。

娘に　そのことを話すと「　私は　大丈夫だから　」と　やつれて　青い顔をして話していた。

「ばかげている。こんなこと」と私は　感じていた。

「何か変だ」と。

 

その後　私自身もヒーリングセッションを受けたりで　いろいろなことがおこり　彼女の不治の病は　様々なプロセスを乗り越えて　私が癌の手術を受け入れられる準備ができたときには　病状は　おさまり　学校へも行けるようになっていた。

そして　医師の処方する薬も　もはや必要としてはいなかった。

この難病は　一生薬を毎日のみ続けること　そうでないと　死んでしまうといわれた娘は　今　元気に楽しく　学校生活を送っている。

 

 

私は　今　特急あずさに乗っている。

こんな夫と娘のことを思い出しながら　今日　家においてきた　娘と父親のことを考えつづけていた。

なぜだろう。

なぜ　夫と娘はこんなになってしまうのだろう。

 

私は　彼らを救わなければと思いつづけていて　

娘は「私は　父親にいじめられている」と言いつづけた

夫は　「おれは　いじめていない　彼女が弱いだけだ　ぼくか゛犠牲者だ」と言いつづける。　

 

私と娘と夫。この三角形は　何なのだろう。

私が　10何年も恐怖に感じていたこの配置。

私が癌の告知を受けたときに　感じた真っ先の恐怖は　娘と夫の関係だった。

私が死んでしまったら　どうなってしまうのか。

もはや彼女を救えないと考え　泣きくずれた。

私には　癌や死への恐怖などは　１％もなかった。

私は　娘の父親への恐怖を考えて　私の心が押しつぶされそうになっただけだった。

 

この三角形の中に　私のもつネガティブエネルギーが充満していた。

どこにも脱出口は見あたらなかった。

 

走る電車の中で　再び　不安と恐怖で押しつぶされそうになった。

どうしよう　どうしよう

今日もまた　夜　家に着いたときに　けんかの報告を受けることになってしまうのか？

 

 

私は　イメージの中で　この二人へ愛と光のエネルギーを送ってみた。

すると　私は　この三角形から　はずれて　しまった。

彼らが仲良くなりますように

と　思った。

 

風船ヒーリングを行った。

私のその不安を　私の描いた風船に入れて　光のエネルギーも入れた。

　風船のひも、下へ向かっているひもには　それにかかわる否定的なこと、ネガティブエネルギーを通して下へ落とした。

その風船は　電車の窓から見える　外の風景の青い空へ　たかくたかくたかく　飛んでいった。

 

私は　心がすっきりとした。とてもうれしくなった。

だから　この二人にメールを送った。

「なんか　今日ね　いいことありそうだよ」

「楽しみだね」って。

 

「なになに　おしえて　どんなこと？」

娘からのメールがすぐにきた。

「くだらないこというな　わけのわからないことをいうのはやめてくれ」

夫からのメールがきた。

 

私はにこにことしていた。

必ずいいことがおこるぞと感じていた。

もう　私の不安はなかった。

彼らのことを思い出していた。

「おかあさんが　またお父さんに言う。

いつもそんないい方をするから　おとうさんとこじれてしまうんだよ」

「私は　そんなに気にしていないのに」

「大したことないんだよ」

「もう　そんな心配しないて゛」

これらの言葉は　私が　夫と娘の中の問題に分け入ってもめているのを調停しようとしていたときによく　娘から言われていた言葉だった。

夫に「娘と仲良くして」と話すときに　夫は

「　いつも　ちゃんとやっている」

と言っていた。

でも私は　「こうこうこういう理由でちゃんとはやれていないでしょう。私は　全部わかっている」という言い方をしていた。

 

風船に飛ばしたあと　ふと思った。

あれ　これって。　

私がこじれさせていた？

へんな思いこみで？

私は　夫と娘のいざこざが起こるたびに

「　やっぱりこうなった。」

「私の創造しているとおりだわ」

と感じることが多かった。

だから　彼女を守ろうとして。彼を正そうとしていた。

もしかしたら私のかんちがい？

ふと思った。

 

その日　家に帰ることがとても楽しみだった。

私は　もう平気

夫のことも娘のことも　心配じゃない。

風船を飛ばしてからは　私は　幸せだった。

とても楽しくすごせていた。

 

家に帰ると　夫は　今日　娘と二人で学校帰りに買い物をしたことを楽しそうに話していた。

風船ヒーリングって　こんなに早くききめがあるのかとびっくりした。

そして　２日後には　二人が今度の日曜日に　車で2時間かかる都会に出て　1日ショッピングを楽しむ計画を楽しそうにたてていた。

もはや　この二人には　なんのいざこざもなかった。

私は　自ら作り出していた　三角形の枠組を　愛と光のエネルギーではずした。

私の彼らを助けなければならないという枠をはずした。

それによって　助けられる彼女も正される彼も存在しなくなってしまった。

 

 

その後

「　おかあさんが　メールで送った　　今日いいことありそう　は　何もなかったよ」

と　彼らは　私に訴えた。

「うーーん　時間がずれたのかな」

「でも近いうちにきっといいことが起こるよ」

と私は話した。

でも私は知っていた。

私が作り出していた　私達のネガティブパワーの三角形が消えてしまったことを。

 

その翌日　

銀行口座に思いがけないお金がふりこまれた。

私の癌保険だった。

 

夫は　「これがいいことだったのかなぁ」と　づぶやいていた。





　ここまでをＨＰで公開しました。これ以降の文は「ヒーラーの誕生」という本で　出版されました。
ネット人口は　まだ　少ないって思います。このたび本という形で　発刊されましたので・
より多くの方に読んでいただけるようになって　とってもうれしいし「　感動しました」っていうお手紙を
　もらって本当にうれしいです。
自分のガン体験記をこうして公開して　そして　書いて「よかった」って思います。

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